読み合わせは、三幕(別れ)から。祝夫人役は、場面ごと出番のない他のキャストに読んでもらい、途中、馴染みの薄い字句があれば、演出から適宜、解説を加え、終幕(愛の昇華)まで一気に読み終えた。主役の祝英台役(青井聡子)は、先週、中国・杭州を駆け足で探訪して帰ってきたばかり。「梁祝」脚本の中で、‘恋人'の梁山伯と一緒に過ごす学校の所在地が、風光明媚な杭州・西湖湖畔に設定されているので、ひと目見たい、と現地入り。「梁祝」の‘気'をいっぱい吸い込んできたのか、この日、自ら読む台詞、漢詩の読み方がうまくなってきた。が、英台の山伯に対す切ないこころ、両親の反対を押し切って愛を貫き、死を決意するまでの深い悲しみの表現は、まだまだこれからだ。
梁山泊役(伊藤健康)は、未だ役作りを模索中。台詞回しが、時に都会に住む‘分けしりの'若者のようになりがちで、実直さ、誠実な優しさ、さらに‘星雲の志'が希薄。病床に伏す場面は、これに反して妙な安定感があるが、最初から元気のなさが目につけば、役作りでメリハリを欠く。五幕
( 破局 } 第一場 ( 杭州の塾 ) までは、向学心旺盛な若者の、純朴な元気さを忘れないように。
英台の侍女、銀心役(菊池知令)と、山伯の下男、四九役(遠藤正彦)の役作りもこれから。学校の先生、周世章役(鈴木英二)、周夫人役(上岡路子)は、もう最初から‘出来上がったよう'な落ち着きを見せるが、これから役柄のしぐさをどうつけていくか、今後の台詞回しでは、場面ごとの動きを自分で工夫して、より‘自由な演技'ができるよう心掛けてもらいたい。
祝家の婚姻を取り持つ邱夫人(李文)。縁談の取りまとめを、‘お金目当て'としないこと、あくまで良縁を取り持つことに自らも喜びとする職業意識を表現すること。山伯の母役(大隅美和子)も、早くも安定感を見せるが、さまざまなタイプの母親のイメージを試してもらいたい。
稽古が終わって「最近の動き」を報告した。3月4日、東京・池袋の「梁祝文化研究所」から紹介されたクラッシックバレーの大徳隆子さんが、わが公演の舞台でバレーとの‘コラボ‘その可能性を打診。昨年3月、大徳さんが所属するバレーアカデミーが制作、実演したバレー舞踊「梁祝」の舞台写真も拝見。驚いた。モスクワのボリショイバレー学校でバレーを学んだという大徳さん。写真に写し出された表現は、簡潔な舞台装置、照明、衣装とあいまって、'本物‘の感。自己完結させたこのバレー舞踊を、わが「梁祝」舞台にどうフィットさせうるか、相当な難題だが、心踊る挑戦となることを期待したい。4月中には回答しなくてはならない。
(続く) |